特集2 
~近江木の実(脚本・演出)特別インタビュー~

今回、近江木の実への直撃インタビューが実現。去年お子さんをもうけたということもあり、興味深い話が聞けた。
――脚本はあがっていないということで。
いきなりそこですか?合い間合い間に書くしかなくて・・展開はできあがっているのであとはどんどん書くだけなんだけどね。
――稽古にもほとんど顔出してない状況です。
合い間合い間に行くしかなくて・・演出補佐のふゆさんにはお世話になってます。
――若い人に任せてる感じですよね?
彼らはかなり力がついてきていると思う。もちろん仕上げはこちらでやりますが。
――脚本ですが、今回もコメディ路線。
4回公演の「エレガントコープス」、6回公演の「ライク・ア・ライアー・コンチェルト」と同じ系譜。だけど今回はコメディとは銘打ってないです。題材が題材だけに・・。
――赤ちゃんポスト。
はい。変に軽くなっちゃいけないかなとも思って。でもちょっとサジ加減を間違えるとチョー深刻な話になってしまう。テーマは深刻であってもお芝居はワクワクウキウキ楽しく観てもらいたいというのが基本ですね。
――だから笑いもある?
無理に笑いを取りに行かなくてもという考えもあると思うけど、人間どこかおかしさを抱え持っていると思うんです。ある種の偏りといっていいかもしれない。ただ、一人だけの世界だと重苦しい悩みも、他人との思いがけない交わりによって変わるということはあり得る。芝居はそういった人と人との出会いや組み合わせをデフォルメします。はたから見るとそれが笑いを誘うということだと思います。
――登場人物ひとりひとりの設定もいつになく濃いような。
そういう面からみると群像劇っぽくなってるかな。単に入り乱れてるだけかもしれないけど。要するにみんな悲しいものを背負ってるんですね、それがさっき言ったように人物の組み合わせやデフォルメで面白可笑しい状況が生まれる。でも大事なのはそのあとで、本当の部分、非常にシリアスなものが突如噴出したりします。「笑いの向こうから切なさがやってくる」みたいに言ったりしてますけど。
――そのへんが近江さんの世界ですね。
ま、そうかもしれませんね。
――実際に赤ちゃんから得たものは大きい?
大きいです。かなり大きい。この1年ずっとそばで見てますけど、赤ちゃんてものすごく豊かです。言葉以前の世界にいながら、いや、いるからかな、感情面やコミュニケーションの幅が広い。広いというか表出がストレート。その分ころころ変わるけど。役者は赤ちゃんを少し見習ってもいいと思う、真面目に。あと好奇心にも圧倒されます。赤ちゃんにしてみれば世界の何もかもが生まれて初めてなんですね。見るもの、聞くもの、触れるものすべて。それらに対する驚きや不思議、恐れや興奮、夢中や退屈、そういう毎日なんです。ちょっとどういう感じか想像できませんが。それが日を経て動けるようになると、大人の真似をしたり、目新しいものに次々寄って行ったり、もう、めまぐるしいです。
――今回のテーマ「赤ちゃんポスト」についてはどうお考えですか?
難しいところですね。生まれたばかりの赤ちゃんの危機に対しては有効ではあると思います。ただマイナス面もある。命が軽く見られる可能性があります。功罪、相半ばです。
――だからこそお芝居のテーマにもなるわけですね。
そういうことです。赤ちゃんは幸せな家族のもとに生まれてきてほしいものですね。両親ともでなくていい、せめて親のどちらかが幸せであることが、こどもの幸せの原点かと思います。本来赤ちゃんの笑顔が親の幸せに結びつくはずです。先ほど言った赤ちゃんの豊かさ、あるいは未来を大人は奪ってはいけないと思います。
――この世に生まれる赤ちゃんがふしあわせにならないことを祈ってこのインタビューを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
                                                (聞き手/Mプラネット制作部)

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