PLAY ACROSS 2nd STAGE in Shizuoka

ゴトーを待ちながら

1、「違う」。仮面をつけた3人はよろよろと立ち上がるやそうつぶやく。彼らは強盗殺人の被害者たち、加害者ゴトーの死刑を待ち望んでいる。そのゴトーが警察に捕まった。が、どうも顔が違うらしい。誤認逮捕とふんだ被害者(死者)の彼らは自分たちが呪い殺すのもありだと言い出す。しかし、本物のゴトーの顔がいまいちピンと来ない。彼らは自分たちが殺された場面を回想することにする。
2、男は生前警官だった。夜の見回りで怪しげな酔っ払いに職務質問をするが、もみあううちに拳銃を奪われる。酔っ払いは本当は酔っ払いではなかった。銃を奪うため、フリをして油断させたのだ。銃口を向けられる警官。まさかの殉職?妻子の顔が思い浮かぶ。犯人に最後まで立ち向かったが、なすすべなく自分は撃たれた・・。と、回想する男。しかし暗闇で見た犯人の顔は定かには思い浮かばない。名前がゴトーということだけが確かめられた。
3、次の被害者は銀行の女性職員だ。交際中の野崎が現金輸送車の担当、野崎が車を離れた一瞬を強盗に狙われる。その場にいた女は応酬するが、勝ち目があるはずもない。女はあえなく銃の犠牲になる。「野崎さん・・」。野崎さんとの夢ある未来が奪われた悲しい境遇。他の被害者2人の涙を誘うが、肝心のゴトーの顔はわからないままだった。かぶり物をしていたようにも見えたという・・。
4、最後は逃走中のゴトーの車にはねられた女性だ。突然の出来事。もちろんゴトーの顔を見ている余裕はなかった。ゴトーを特定できない三人は、やはりここで待ちつづけるしかなかった。が、はねられた女性は、その無意味さを訴える。男は言う、「俺たちが待つのをやめたら、待たれるあいつも消えてしまう」と。だが、女たちは次々、仮面をかぶり死んだ人間として自主的にリタイヤしていく・・。
5、「死」は想像の及ばない出来事だ。三人は「死」について述べ始める。それは孤独なモノローグ。心に深く沈む言葉を紡ぎ始める。「私がいない、私がいないってどういうこと?・・」「私は私に関係なく生まれ、私に関係なく死んでいく・・」「人は遠からず死ぬ。ただそれがいつなのかはわからない。日々悔いが残らないように生きるだけだ・・」
6−1、「エンザーイーヤー、エンザーイーヤー」
死者の三人は呪文に呼び出される。死者と話ができる口寄せだ。口寄せは捕まった。容疑者の疑いを晴らすために雇われていた。その口寄せに一人一人がのり移る。そしてその場で本物のゴトーを発見する。何と本物のゴトーは警官だったのだ。その顔はお面さながらに無表情だった。三人は口々に今捕まっている男の無罪を言い、警官を本物のゴトーとして告発する。が、三人のあまりの興奮に口寄せがダウンしてしまう。
6−2、三人と口寄せの交感は途絶えた。女二人は気が済んだが、男は気がかりだった。真実が隠蔽されるかもしれないのだ。男は最後まで(ゴトーの死刑まで)見届けるという。女たちも意をくみ、男に従うことにした。長い間三人は待ち続けた。死んでいることと待っていることの区別さえなく、時は過ぎ去った。待つ身は、とことわの松にでもなったようだった。とことわの松・・ゴトーを待つ・・
6−3、そしてついにゴトーがやってきた。はたしてその顔は・・「違う」・・三人は「死」の世界でむなしく横たわる。その世界を象徴するとことわの松に、三つの仮面。その仮面は笑っているのか怒っているのか、冷たく無表情のまま、永遠に死んでいる被害者3人を見下ろしていた。

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